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療育とは 発達支援との違いや指導法は

療育と発達支援は同義語となりつつある

皆さんは療育という言葉をご存知でしょうか。近年は発達支援の名称を使う頻度も増えていますが、その違いを知っていますか。

ここでは、療育の意味や発達支援と異なる点、発達促進が期待される領域、提供先で実践されている代表的な指導法の概要を紹介しています。お子さんの自立に向けた手段の一つとして、知って頂きたいです。

療育や発達支援における指導法

1. 療育とは

1-1. 療育の定義と対象

療育とは医療と教育を表している造語で、もともとは肢体不自由児の自立に向けた並行アプローチの概念です。現在は、医療行為の有無を問わない広い意味へと変わり、身体障害や知的障害の子供、発達障害等に該当する児童だけでなく、発達に遅れや心配があるお子さん達も療育の対象としています。

提供先は医療機関だけでなく、地域の児童発達支援や放課後等デイサービス、私立の施設があり、運動機能や言語・社会性等の向上を目的とした指導が実践されています。

1-2. 療育と発達支援の違い

発達支援は、狭義の意味で療育と同義語に扱わており、発達向上を目的としています。近年はインクルージョンの価値も加わり【長所や意欲さを含めて本人の強みを生かす】【本人・家族の意向を尊重する】【地域社会で共生する点を大切にする】がポイントとして挙げられています。

児童福祉法と障害者自立支援法に分けられていた障害児支援が、平成24年に一本化され、各地で「児童発達支援」が誕生しました。その後、児童発達支援の施設数増加や、発達障害への注目が重なったことで、発達支援の名称が広がりをみせています。

役割り①:直接の支援

療育と同様の指導・プログラムを実施。幼児教育や養護を取り入れたアプローチ。

役割り②:家族支援

育児不安や資源利用等に関する相談。家庭でおこなえる技法や関わり方等の伝達。

役割り③:社会的支援

未就学児施設・学校等との連携や情報共有。インクルージョンやダイバーシティの啓発。

1-3. 療育の提供形態と特徴

個別型の療育

実施時間の目安:20~60分

取り組みやすい領域:言語(1対1のコミュニケーショを含めて)、摂食、運動機能と動作、リハビリ、概念

個別型の療育では、対象児童に沿った細分化指導ができる為、発達の基礎を形成する際に有効です。又、十分な配慮を加えたり、実施時間内でのプログラム調整をしやすいので、不得意さ・つまづきがある領域に有効とされています。

集団型の療育

1プログラムの時間目安:10分~90分

取り組みやすい領域:社会性・対人関係、コミュニケーション(複数人でのやり取り)

集団型の療育は、2~4名程度の小集団型、それ以上の集団型で構成されます。小集団型は、各児童からすると対象が少数なので、誰に向けて社会性やコミュニケーションを発揮すべきか分かりやすいです。多数参加の集団型療育は、一般に近い状況下で、社会性等の発揮をねらいとしています。

2. 療育において指導する領域

概念:視覚的に分かりやすい事柄として色・形、高度な事柄として数や文字等、私達は様々な概念を習得した上で生活しています。概念は、大人側からすると学習や経験の積み重ねで蓄積していますが、子どもにとっては未学習や未経験から理解困難な場合があります。

運動機能と動作私達の動作には、筋や関節等を使った運動が伴っています。腕を伸ばして物を取ることや、椅子に座り姿勢を維持することや、睡眠中の寝返り等とその範囲は多様で、それらを実行する際は適切なコントロールが必要です。一つひとつの動作は、動作に関する概念が形成されていることに加え、動作を実行する為の運動機能が組み合わされて成立しています。

言語・コミュニケーション言語は社会性や対人関係に影響を及ぼし、語彙理解の乏しさから約束事を守ることが困難な場合や、表出言語の幅が少ない為に明確な意思表示ができず、対人関係で躓くケースがあります。コミュニケーションには言葉の意図だけでなく、表情やイントネーション、頷き等の動作、会話の往復回数等も含まれます。

社会性・対人関係:理解しやすい社会性として、日常生活での「挨拶」、一般に浸透している「決まりごと」があります。又、困っている人を助ける等の向社会的行動も社会性の一部です。人の社会性は非常に高度で、人は、身に付けた社会性を状況に応じて使い分けています。対人関係には「心の倫理」と呼ばれる相手の心を推測する機能が関係しており、更にコミュニケーション等のスキルも絡み合います。

身体障害等の児童に対する領域

摂食:摂食する食材の適切な形状について指導を受けたり、口腔機能の向上訓練をおこないます。不適切な食事摂取が続くと、誤嚥等から肺炎を引き起こすこともあるので注意が必要です。

リハビリ:身体の筋量増加や筋緊張を減らすことを目的とした指導、関節の可動域を広げる訓練等をおこないます。障害等の種別によっては幼くして拘縮や変形がみられるので、現状を維持する為のリハビリでもあります。

3. 療育はいつから始めるの

療育を始める時期は、可能な限り早期が好ましいと言われおり、養育者へのバックアップが理由として挙げられます。お子さんの発達促進は、身近な存在の助けがあってこそ成立するものです。まずは保護者の方が、子育てに関する悩みや不安を和らげ、必要な知識を得ることが重要です。焦らず、少しずつ「お子さんの良き理解者」になって下さい。

療育に関する誤まった認識として、早期療育の開始は、早期から療育の時間を多分に確保する意味ではありません。月齢が低い時は、身体機能を十分に加味し、当事者の発達状態に沿った時間・回数を設定すべきです。お子さんが療育に追われないよう配慮して下さい。

4. 療育の効果

療育の効果は、個々でバラつきが見られ、複数の要因から違いが生じます。一つ目に、お子さん各々の知的能力が異なるので、同じ指導を受けても、全員が同じように理解できるとは限りません。二つ目に、身体機能も一人ひとり違うので、適切な理解ができても同じ動作になるとは限りません。三つ目に、発達障害等による特性次第では、繰り返し指導を受けても身に付けづらい領域が存在します。

食事動作や衣類の着脱、排泄行為等の日常生活動作は、多数の児童で効果が期待できると言われており、スモールステップを繰り返して長期的(重度に該当する児童は学齢期を含めて)に習得する傾向です。

お子さんが療育を受ける際は、どんな発達促進が期待できるのかを尋ねて下さい。同時に、効果が上がりづらいこと・期待できないことの説明も受けて下さい。

5. 療育でおこなわれて指導法の種類

療育では様々な技法を用いて、身体、行動、コミュニケーション、認知等に働きかけ、対象児童の発達を促進します。応用行動分析は用途の範囲が広く、TEACCHの構造化技法は自閉スペクトラム症への環境整備として有名です。 感覚統合療法は身体機能の向上に有効とされ、ソーシャルスキルトレーニングは一般でも使用される技法です。

各提供先では、数種類の技法を取り入れていたり、いくつかを組み合わせて実施しています。それぞれの技法にメリットがある為、対象児童の発達特性を考慮しつつ、有効活用されています。

最後となりますが、多様な技法の一部を紹介させて頂きます。

5-1. 応用行動分析

応用行動分析とは、身に付けたい行動を形成する時や問題行動軽減のために用いられ、分析する際に「三項随伴性」と呼ばれる

先行刺激(事象)→行動→後続刺激(結果)

の観点から行動を捉える考え方です。ターゲットとしている行動の前後関係を分析し、前後の内容を調整したり取り除くことで、行動形成や行動軽減をおこないます。

行動形成では、以下の技法を用いることが多いです。

①トークンエコノミー法:目標とする行動を身に付けるために報酬(好きな物・褒め言葉等)を与えて、行動を強化する

②シェイピング法:目標としている行動に近い行動を取ったら、それを増やすようにして目標行動に近付ける

5-2. 認知行動療法

認知行動療法は、行動療法と認知療法を発展させたアプローチです。児童への適応としては「不安や怒り」に課題を持つケースで用いることが多く、不安や怒りが生じる際の感情・身体反応・行動・認知を知ることから始めて、最終的には自分で対応する手段を身に付けるます。

認知行動療法で用いられる技法には、以下のものがあります。

①認知再構築法:パターン化した自動的な思考に気付き、適応的な認知に変容する

②セルフモニタリング:自分の感情・行動等を自分自身で観察や把握する

③行動活性化:行動を変化させることで、否定的な認知を変容する

5-3. ポーテージプログラム

ポーテージプログラムは、アメリカで開発された早期教育プログラムのことです。指導の特徴として

①現状の発達に応じた個別プログラムを実施する

②養育者が中心となり家庭で指導をおこなう

③応用行動分析の原理を使う

となっています。プログラムは発達領域を「乳幼児期の発達」「社会性」「言語」「身辺自立」「認知」「運動」に分けており、更に領域毎の行動目標を576項目定めてあります。プログラムを実施する際、まずはチェックリストで対象児の現状把握をします。その後、習得すべき行動を決め、指導の仕方が書かれている「活動カード」を目安として、日常生活内で実施します。

5-4. TEACCHの構造化技法

TEACCHはアメリカのノースカロライナ州で実施されている自閉スペクトラム症に該当する当事者とその家族を総合的に支援するプログラムです。支援は当事者が自立できる環境を構築するだけでなく、地域社会との共生や共働が含まれています。

TEACCHでは、自閉スペクトラム症の特性を考慮した構造化が用いられています。

①物理的構造化:それぞれの活動内容とそれを実施する場所を一致させる

②時間の構造化:個別に時間の流れを文字や写真等で提示する

③手順の構造化:課題の種類、課題の実施時間、課題の終わり、課題終了後に何をするのか示す

④課題の組織化:課題のやり方を視覚的手がかりにより明瞭に提示する

5-5. ソーシャルスキルトレーニング

ソーシャルスキルは社会的技能の意味で、社会生活や対人関係において必要な技能を習得するトレーニングです。以下が一般的な指導の流れです。

①身に付けたい技能を選定

②視覚・聴覚を利用して、分かりやすい形で技能の手順を提示

③支援者が実際に手本をみせて理解を深める

④実際に練習する場面を設定して、成功体験を積み重ねる

⑤練習内容について、良かった点を中心に改善点も含めて本人に伝える

⑥日常生活場面で技能を使って一般化する

5-6. ソーシャルストーリー

ソーシャルストーリーは自閉スペクトラム症の特性を加味して、視覚情報となる文章で情報を伝えるアプローチです。

導入には以下のガイドラインが定められています。

①事実文含めて6つの文型(見解文、協力文、指導文、肯定文、調整文)のどれか、またはいくつかを使用する

②ストーリーはテーマを明確にする導入部、詳しく説明する主部、情報をまとめる結論部で構成する

③少なくとも50%以上は達成を賞賛する

④子どもの疑問に答える時は5W1H(いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように)で応じる

⑤一人称または三人称を使用し、二人称は用いない

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5-7. コミック会話

コミック会話とは、会話内の意図理解に不得意さをみせる人に対して、人物の線画と吹き出しの言葉を書いてコミュニケーションを取る技法で、紙と書くものさえあればどこでも簡易に実践できます。

会話を視覚化することで、双方向コミュニケーションが成立しやすくなるだけでなく、順序立てて説明する技能の獲得、他者の気持ちに気付く機会を得られます。

5-8. 拡大・代替コミュニケーション

拡大・代替コミュニケーションとは、話し言葉以外の手段を用いる方法で、以下が代表的です。

①絵カード交換式コミュニケーションシステム(PECS):絵カードの手渡しをコミュニケーションに置き換えることから始めて、語彙拡大や要求伝達等の機能獲得を目的とするシステムです。指導は6つのフェイズから構成されており、コミュニケーションの仕方を知り、そららを不特定場面でおこなえるよう一般化し、更に欲求や質問への受け答えへと広げます。

②音声出力会話補助装置(VOCA):VOCAには録音登録した単語を発する装置と、キーボード入力された文を音声出力する装置があります。扱いやすいを考慮して、シンプルな構造になっているものが多いです。

③シンボル(任意に作られた意味をもつ記号):日本工業規格による「 コミュニケーション支援用絵記号」や、視覚支援シンボル集の「ドロップス」が有名です。現在は、スマートフォンやタブレット等にアプリケーションを入れて利用できるものが増えています。

5-9. マカトンサイン

マカトンサインとは、イギリスで開発された言語指導方法です。音声・動作サイン・線画シンボルの同時提示を基本としており、聴覚情報だけでなく視覚情報を用いて、言語発達の促進やコミュニケーション手段の習得を目指します。

マカトンでは、日常生活に必要な最低限の語彙を330語選び出しており、生活の拡大や発達に合わせて語彙を身に付けます。

5-10. インリアルアプローチ

インリアルアプローチとは、子どもと大人が相互に反応し合うことで学習とコミュニケーションの発達を促進させます。特徴は、子どもと大人の関わり場面を録画後に分析し、コミュニケーションの成立部分を客観的に評価する点です。良好なアプローチをおこなう際は、以下の技法が用いられます。

①ミラリング:子どもの行動をそのまままねる

②モニタリング:子どもの音声や言葉をそのまままねる

③パラレルトーク:子どもの行動や気持ちを言語化する

④セルフトーク:大人自身の行動や気持ちを言語化する

⑤リフレクティング:子どもの言い誤りを正しく言い直して聞かせる

⑥エキスパンション:子どもの言葉を意味的、文法的に広げて返す

⑦モデリング:子どもに行動や新しい言葉のモデルを示す

5-11. 感覚統合療法

感覚統合療法とは、アメリカの作業療法士によって体系化された理論で、身体状態の感覚を主に扱います。

前庭覚:適切な姿勢・バランス・運動を維持、眼球運動の調整 

固有覚:身体各部の位置や運動を知覚、筋緊張の調整、身体イメージを形成する

触覚:人やものとの距離を感じる、身体位置や部位を知覚

視覚:人やものに視線を向ける眼球運動、視線を向ける時のピント調整機能

こららの感覚を調整・改善することで発達促進に繋げます。

発達障害に該当するケースでは、感覚を統合する脳の中枢神経に特殊さがあり、感覚過敏・感覚鈍麻、不器用さを表すことがあります。まずは感覚特徴や運動機能をアセスメントし、対象者の状態に沿ったプログラムを導入することで、運動企画や協調運動等を向上させます。

5-12. ムーブメント教育・療法

ムーブメント教育・療法とは知覚運動理論家によって体系化されたもので、動き(楽しい軽運動)を通して「からだ」「あたま」「こころ」の包括的な発達援助をおこないます。発達状況を把握するアセスメントも開発されており、運動・感覚、言語、社会性を評価できます。

実際の活動は、自主性・自発性を引き出すために音楽や場所等を有効活用し、更にカラーロープ・プレーバンド・ビーンズバック・パラシュート・フランコ・スカーフ・フープ等の遊具を取り入れて展開します。

5-13. 音楽療法

音楽療法とは、音楽の持つ力を通して人の生理・心理・社会・認知状態に作用をもたらし、音楽と人との関わりからQOL(クオリティー・オブ・ライフ)の向上をはかります。心身の発達促進だけでなく、コミュニケーションとしての利用、情緒の安定や問題行動の減少に繋げるアプローチが実践されています。

方法としては、楽器演奏や身体動作を伴った表現活動等の能動的なものと、音楽を聴くことでリラクゼーションや瞑想状態をつくる受動的な方法があります。

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