学習障害とは一体どんな状態を指すの?ふと疑問に思う方がいるかもしれません。
医学的診断基準は読字、書字、算数のいづれかに困難さを表すことに加えて、当事者の生育歴・学習歴や心理検査等の結果を含めて包括的に診断されます。
まずは、彼らが抱える困難さを理解して下さい。その上で、どう学ぶべきかの方向性を理解して頂ければと思います。
学習障害とは、特定の学習に著しい困難さが続く状態を指します
学習障害とは一体どんな状態を指すの?ふと疑問に思う方がいるかもしれません。
医学的診断基準は読字、書字、算数のいづれかに困難さを表すことに加えて、当事者の生育歴・学習歴や心理検査等の結果を含めて包括的に診断されます。
まずは、彼らが抱える困難さを理解して下さい。その上で、どう学ぶべきかの方向性を理解して頂ければと思います。
教育と医療で考えが異なる
教育:【聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する】について習得・使用に困難を示している状態である。
医学:【読字(流暢さ・読解力)、書字(綴字・文法・構成力)、算数(数概念・計算・数学的推理)】の使用について困難を示している症状がある。
学習困難は知的能力や視聴覚の障害、精神・神経疾患を要因としていない。又、学習機会の不足や学習への不適切な指導から発生していない。
教育(文部科学省)の定義による学習障害は「聞く、話す」を含めた包括的な内容となっており、全米LD合同委員会の定義を参考としています。医学では、口頭言語の問題をコミュニケーション等の症状として扱っています。
学習障害と判定されるのは学齢期以降となりますが、幼児期から兆しを伺わせるケースもあり、発覚以降も学習の困難さは持続されます。
学習障害の診断は、学習到達度の検査をおこなうだけでなく、困難さの要因を探る為に、知能や認知機能の検査も実施します。
話すのは得意だけど読みが苦手で、たどたどしさが続いている
読むこと自体に困難を抱えて場合は、目にした文字を音声に変換するデコーディングが苦手で、1文字1文字、ゆっくりと読む傾向にあります。
形の似た平仮名や漢字を、よく読み間違えてしまう
視覚情報を脳で処理する過程に困難さがある児童は、文字の識別が曖昧となり、読みを誤ります。
文字は読めているが、内容を理解できず問いに答えられない
正確に読めているにも関わらず内容を理解できていないケースでは、読んだ内容を一時的に記憶するのが不得意であったり、読んだ内容の統合機能に弱さを示します。
余談となりますが、知っている語彙の量が少ないことも、読みに影響を及ぼします。
文字を書くと、誤字や脱字が多い
文字の書きに誤りが生じる背景として、書字の運動技能に不得意さを抱えており、正確に書きたくても表出できないケースがあります。
視覚情報の処理が不得意な子供は、文字の形態認知が不正確なだけでなく、自分で書いた文字の正誤をすぐに判別できない可能性があります。
句読点の誤りや、不正確な文法の使い方をする
句読点や文法の誤りは、統語に関する規則理解が曖昧となっているかもしれません。
作文を書く時に、構成のイメージができない
文章構成力の困難さは、構成の順序立てが弱いだけでなく、書きたいことが不明確であったり、知識不足等の要因が重なり合っています。
数の感覚が理解できない。どちらが大きいと問われても曖昧な返答をする
算数障害に該当するケースでは、数を数量として扱うことが難しく、数の順序立てや比較に不得意さを表します。又、瞬間的な数量把握が苦手で、見た数字を数量として捉えることが困難な傾向にあります。
簡単な足し算や引き算を解く時に、指を使わないと解けない
計算を解くには数学記号の意味理解に加え、計算手順を正確に踏むことが必要です。しかし算数障害では、手順の記憶に困難さを抱えていたり、計算が不正確であったり、計算処理が流暢でないケースがみられます。
文章問題の理解が難しく、計算式を導き出せない
文章問題や図形問題を解く時、与えられた数学的情報から適切な方略を推理できず、計算式まで辿り着けない児童がいます。
低学力を引き起こす要因として、学習障害だけでなく知的能力障害や視聴覚障害、精神・神経疾患が挙げられます。
外国籍児童や帰国子女の場合は、日本語の習得不足が低学力を引き起こします。
その他、家庭環境の不安定さや学習意欲の乏しさも、学力に影響を与えます。
「低学力=学習障害」と、一方的に決めつけるのは危険です。まずは、適切な指導のあり方、学習機会の確保を実践して下さい。
学習の躓きは、学習障害の診断有無に限定せず、小さな躓きを起こしている時点でアプローチを試みるべきです。
特に読字の躓きは、書字や算数に影響を及ぼすだけでなく、学習全般に困難さを生じさせるので留意して下さい。
適切な支援を始める際は、当事者が「読字、書字、算数」のどれに躓いているかを把握するだけでなく、具体的にどんな点が不得意なのかを探るべきです。
読字の平仮名に関する支援は、46個ある各平仮名と音声のマッチングを高めます。アプローチする際は、画数の少ない平仮名から指導することを勧めます。
単語を見て、音声に変換する読みの正確性・流暢性の向上は、有意味語だけでなく無意味語を読む指導があります。
漢字の読み方を身に付けるには、イラスト等の視覚教材を利用した学習や、日常生活内で漢字の活用頻度を増やします。
文章読解に関しては、2~3行の短い文章から取り組み、理解が増すにつれて文章を長くします。
補足:学習障害の児童に限定せず、知っている語彙を増やすことは、読み書きの両方に好影響を与えます。漢字は、意味を含めて理解することが大切です。
書字の初期支援では、平仮名のなぞり書きから始め、視写へと移行させます。その後、正確な文字を書けているか自分で判断できる段階へと発展させます。
文を書くには、どのような文構成にするかのプランニングが重要です。5W1H(いつ、どこ、だれ、なに、なぜ、どのように)等の定型文を真似することで、基礎が築けます。
文章作成は、題材を設定し、題材に関する情報を想起し、文章構成を考えることが求めらえます。文章を書く前にメモ書きをして、書きたい情報を整理するよう伝えて下さい。
算数の支援は、基礎となる「数詞と数字と数量」の三項関係を習得します。算数セット等の手に取れる教材を使用し、一桁の数を丁寧に指導します。
計算の理解や正確さを高めるには、視覚情報を交えた専門家の直接的な指導が有効と報告されています。
ICTを活用した支援方法
近年、学習障害を含めた児童全般への支援方法として、タブレットやパソコンを中心としたICT(情報通信技術)の活用が推奨されています。
文部科学省は、紙媒体の教科書だけでなく、デジタル教科書の併用を認めており、「デジタル教科書実践事例集」も公表しています。
デジタル教科書の有効な機能として、文字の拡大、文字の読み上げ、文字色・背景の変更、漢字へのルビ等があります。
尚、デジタル教科書を個人で入手されたい方は、各出版社のホームページから購入できます。
書字に著しい困難さがある場合は、ICTを使ったキーボード入力や音声入力で代替し、書くことにこだわらない支援が望まれます。
ICT以外の支援方法
学習障害の児童に向けては、ICT以外の教材を使った支援方法もあります。
文字を見やすくする「リーディングトラッカー」の使用、文字が書きやすい「マス目付きノート」の活用、計算手順や単位変換が載っている「表」を使う手段があります。
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