大人の皆さんなら実感できると思いますが、いじめは学校生活で常に隣り合わせています。令和元年公表「平成30年度調査結果」の認知件数は543,933件であり、小・中・高・特別支援学校の総数における80.8%で発生している結果となりました。ここでは、いじめに関する法律や状況等を知って頂くだけでなく、いじめが起こる原因、保護者さんがとるべき対応、いじめを受けた当事者の気持ちを考えました。
いじめを警察に相談・通報した件数は1,229件あります
※平成30年度の文部科学省調査より
大人の皆さんなら実感できると思いますが、いじめは学校生活で常に隣り合わせています。令和元年公表「平成30年度調査結果」の認知件数は543,933件であり、小・中・高・特別支援学校の総数における80.8%で発生している結果となりました。ここでは、いじめに関する法律や状況等を知って頂くだけでなく、いじめが起こる原因、保護者さんがとるべき対応、いじめを受けた当事者の気持ちを考えました。
目的
いじめの防止等(いじめの防止、早期発見及びいじめへの対処)のための対策に関し、国及び地方公共団体等の責務を明らかにし、基本方針・対策事項の基本を定め、総合的かつ効果的に推進します。
いじめの定義
いじめの対象となった児童に対して、一定の関係にある他の児童等がおこなう心理的・物理的な行為で【対象児童が心身の苦痛】を感じていることです。インターネット等を通じたものも含まれます。
責務の定め
国:いじめ対策を総合的に策定し、実施します。
地方公共団体:地域の状況に応じた対策を総合的に策定します。
学校設置者:学校におけるいじめを防止するための措置を講じます。
学校及び学校の教職員等:いじめの早期発見、いじめへの適切かつ迅速な対処をします。
保護者:児童がいじめをおこなわないよう指導に努めます。いじめを受けた時はいじめから保護をします。
早期発見
学校及び学校設置者:早期発見のために定期的な調査を講じます。また相談体制を整備します。
国及び地方公共団体:いじめの相談、通報を受けるために必要な施策を講じます。
いじめに対する措置
学校は通報やいじめを受けたと思われる時、速やかにいじめの事実有無を確認し、いじめをやめさせて、再発防止をします。
いじめが犯罪行為として扱われるべき内容の時は警察署と連携して対処します。犯罪行為に考えられるいじめには、強制わいせつ、傷害、暴行、強要、窃盗、恐喝、器物破損等があります。
重大事態への対応
重大事態①:児童等の生命、心身、財産に重大な被害が生じた疑いがある時。
重大事態②:児童等が相当期間学校を欠席している疑いがある時。
対処:学校設置者又は学校は事実関係を明確にするための調査をし、いじめを受けた児童及び保護者に調査結果の必要情報を適切に提供します。また国立学校は文部科学大臣へ、公立学校は教育委員会へ、私立学校は都道府県知事へ報告します。
文部科学大臣は都道府県や市町村に、都道府県教育委員会は市町村に指導、助言、援助します。
※文部科学省は【いじめ重大事態の調査に関するガイドライン】を作成しています。
※平成30年度時点での文部科学省調査より
小学校総数:19,974校
いじめを認知した小学校数:17,145校(総数の85.8%)
警察に相談・通報した小学校数:212校
重大事態が発生した小学校数:188校
中学校総数:10,405校
いじめを認知した中学校数:8,862校(総数の85.2%)
警察に相談・通報した中学校数:449校
重大事態が発生した中学校数:280校
高等学校総数:5,674校
いじめを認知した高等学校数:3,556校(総数の62.7%)
警察に相談・通報した高等学校数:203校
重大事態が発生した学校数:113校
特別支援学校総数:1,139校
いじめを認知した特別支援学校数:486校(総数の42.7%)
警察に相談・通報した特別支援学校数:20校
重大事態が発生した特別支援学校数:4校
アンケート調査等:52.8%
本人からの訴え:18.3%
学校担任が発見:10.6%
保護者からの訴え:10.4%
他の児童生徒からの情報:3.5%
担任以外の教職員が発見:2.3%
他の保護者からの情報:1.3%
その他:0.8%
①冷やかし、からかい、悪口、脅し文句、嫌なことを言われる。
②仲間外れ、集団に無視される。
③軽くぶつかられる、遊ぶ振りをして叩かれたり蹴られる。
④ひどくぶつかられる、叩かれたり蹴られる。
⑤金品をたかられる。
⑥金品を隠されたり、盗まれたり、壊されたり、盗まれる。
⑦嫌なことや恥ずかしいことや危険なことをされたり、させられたりする。
⑧パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる。
⑨その他
家庭訪問を実施:11.3%
別室提供や教職員が付く等して心身の安全を確保:4.0%
相談員等のカウンセリング:3.2%
教育委員会と連携して対応:2.9%
その他(パーセント1ケタ未満):関係機関との連携した対応、緊急避難としての欠席、学級替え。
※いじめの認知件数543,933件に対して特別な対応をした割合。複数回答可
保護者への報告:45.6%
いじめを受けた児童生徒、その保護者に対する謝罪の指導:43.4%
別室指導:11.3%
校長、教頭が指導:4.8%
相談員等のカウンセリング:1.8%
その他(パーセント1ケタ未満):関係機関との連携した対応、自主学習・自宅謹慎、停学、訓告、学級替え、退学・転学、出席停止。
※いじめの認知件数543,933件に対して特別な対応をした割合。複数回答可
いじめが発生する要因
いじめは小さな偏見等から発生し、理不尽な因縁をつけられ、それが発展した結果です。学校生活の中で児童達は「普通と異なる」「あいつ変だよ」等の少しの違いを過度に捉えてしまい場合があります。冷静に考えると分かるはずですが、私達は全ておいて多様で、顔や体型や服装等の見た目、勉強や運動や器用さ等の得意・不得意さ、性格や価値観等の目に見えないものを含めて一人として同じ人間はいません。身近にいる大人は「違い」の当然さを伝える義務があります。
いじめた側の要因として、他者をいじめることで精神状態のバランスを保っている可能性があります。勉強ができない劣等感、仲間関係で優位性を保ちたい上での行動、力でしか存在価値を表せない自己呈示の問題、本人では解決することが難しい家庭の問題、打ち込めることが無いやるせなさ等が背景に潜んでいます。いじめる対象は自分の生活テリトリーにいる存在で、なぜいじめるのか問うと「反応が面白かった」「からかいの延長」「なんか気に入らない」等と身勝手なこじつけを持ち出します。受けた側からすると理不尽極まりないことですが、たまたま一定の距離にいたことで、いじめのターゲットとなってしまいます。
いじめが継続する要因
周囲の児童生徒が傍観者となったり、いじめの報告を戸惑う理由として、いくつかの要因が考えられます。真っ先にあがることとして、多数の他者がいるので自分が介入しなくても誰かが言うだろうと思うからです。又、自分の問題ではないという理由付けをして、無関心の態度を装うこともあります。もう一点脳裏によぎることとして、自分へ被害が及ぶことや巻き込まれることへの恐れがあります。
教職員は「いじめを非難する立場」にありますが、実践するには高いハードルを越えなけらばなりません。特にクラス担任は、いじめを受けた側、いじめた側、傍観者等と各児童生徒の実態を知っているだけでなく、学校生活を通して各々と関係を築いているので指導への躊躇が生じます。そもそも担任はクラス運営に影響を及ぼす「構成員」の一人であり、児童生徒と同様にクラスシステムの一旦に担っている存在です。その為、どうしても「クラスの輪」を考え、丸く収めようとする心理が働いてしまいます。
いじめを受けた時は本人が他者へ相談できると早期発見に繋がりますが、それを実践するのは非常に難しいです。当事者の心理を考えると、いじめの対象となったことは受け入れがたく、恥ずかしさ等の感情を抱きます。同時に自分に非があると思い込み、責めるケースもあります。親御さんからすると「すぐに言ってくれれば」や「何で言ってくれなかったの」と思いますが、本人からすると心配や迷惑を掛けたくない気持ちが生まれ、家族だからこそ相談しづらい状況ができてしまいます。
発達的特徴から捉えると、乳幼児期に困りごとが起こった場合は保護者等へ伝えて問題解決をはかりますが、年齢が高まるにつれて自己解決を試みます。子どもが大人になる「自立」のメカニズムが育まれており、大人側は直接助けることから見守る側へと役割りを変えます。ここでいう自己解決は、年齢に沿った発達課題を解決することであり、いじめ等の理不尽さを乗り越えるものではありません。ただし子ども達はまだ未熟であるので、自己解決すべき課題かどうかの判断は難しく、結果として相談しづらい状況に陥ってしまいます。
いじめを受けた当事者は、悲しみや辛さを自分一人で抱えている可能性があります。まずは当事者の気持ちを存分に受け止めて下さい。受け止めた後は「味方であること」を伝えて下さい。
いじめを受けた場合
いじめられた際の対応は「事実確認及び即効性の対処」と「いじめ後の対処」を区別するべきで、特に前者は毅然さと明確さを持って臨まなければなりません。まずは【事実確認】を学校側に要求して下さい。いじめ防止対策推進法に明記されているように、学校は対処責務があり、事実確認をしなくてはなりません。
もしも学校が迅速かつ適切な対応を取らない場合は、文部科学省の「24時間いじめ相談ダイヤル」や法務省の「子どもの人権110番」に相談して下さい。又は県教育委員会や市区町村教育委員会への対応依頼も有効です。各機関に相談した際は【相談日時】【相談窓口の担当者名】【相談内容】等を記録(録音等も含めて)しておき、確実に対策を取って頂けるようにしましょう。
※文部科学省のホームページには【いじめ対策に係わる事例集】があります。有効活用して下さい。
いじめた側になった場合
いじめた側の保護者になった場合、つい様子を見守るスタンスとなりますが、適度な介入は必要です。まずは本人の思いを聞く時間を定期的に確保して下さい。本人が思いを話さない時は、話さない状況のままで構いません。沈黙を含めた話し合いの時間は振り返りや反省に繋がり、いじめについて考える機会となります。いじめの質が悪質になるほど、向き合うことは難しくなります。向く合う苦しさから逃げ出したくなりますが、お子さんと一緒に見つめ直すよう心掛けて下さい。
いじめの要因にも書きましたが、いじめた側は自分自身の問題で悩んでいる場合があり、定期的な話し合いの中で、少しずつ悩みを打ち明けてくれるかもしれません。自分の課題へ向き合えるよう気持ちの整理に付き添い、いじめという行動に逸れない配慮をして下さい。
いじめという言葉で穏便に済ませようとする向きもありますが、犯罪に該当し得る内容もあります。暴力は暴行罪や傷害罪、金品に関するものとして恐喝罪や窃盗罪や器物損壊罪、その他にも脅迫罪や強要罪を適用できるケースがあります。状況次第では弁護士に相談をして、いじめを受けた当事者だけでなく、ご家族も傷付かないような適切な解決が望まれます。
最後となりますが、いじめは非難されるべき行為であり、いじめを受けた側は身体的・精神的に傷付けます。加害者側は「そこまで悪意はなかった」等と自分を守るための発言をしますが、悪意の有無に関係なく他人を攻撃していい理由は存在しません。いじめという行為に対して大人側は明確な否定を続けるべきです。
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